今回も虫が嫌いな人は読まない方が良い気がする(笑)
私の住む長野県の伊那地方は日本でも有数の昆虫食文化のある地域だということは何回も書いています。特に「ざざ虫」と呼ばれる水棲昆虫の幼虫を食べるのは全国でも、ほぼここだけでしょう。
そしてそのざざ虫漁がこの冬はまれに見る不漁だということも昨年末に書きました。
年が明けてからも何度か川へ行ってみましたが、まぁ、キロ単位で捕るのは無理ですね。
今現在「ざざ虫」というと、釣り人が言うところのクロカワムシ、つまりヒゲナガカワトビケラ(シマトビケラも含む)を主体として、数は少ないけれどカワゲラ、そしてマゴタロウムシと呼ばれるヘビトンボ、この三種類を差しています。
佃煮販売業者さんはトビケラとカワゲラを「ザザムシ」として、ヘビトンボを「マゴタロウ」として売っています。
ただこれは商売上の分類で、商売抜きでもっと昔から捕って食べてた人たちはもっと広い範囲の虫まで含めてざざ虫と呼んで食べていたそうです。カゲロウの幼虫や、吸盤のようにへばりついて厄介なヒラタドロムシやヤゴまで含めて佃煮にしていた家庭もあったとか。
まぁ、うちの辺りはではざざ虫の他にも、イナゴや蜂の子、蚕のさなぎ、さらには私はさすがに食べたことないですがタガメの仲間やゲンゴロウも食べられていたというから虫ならなんでもありなのかも(^_^;)
地元の図書館でざざ虫に関する本を探す。
地元図書館の郷土誌コーナーを探ると、いくつかざざ虫に関する記述がみつかります。
『長寿県信州の食を考える』
信州大学農学部 食を考えるグループ 編
郷土出版社刊 1992年9月28日初版発行
『伊那の冬の風物詩 ざざ虫』
牧田 豊 著
天竜川上流工事事務所調査課刊 1999年3月19日発行
この二冊によると、
- 広義では、水棲昆虫全体をざざ虫と呼ぶが、狭義では、ザザムシとは本来カワゲラのことを言い、トビケラは青虫、ヘビトンボはマゴタロウムシと呼ばれていた。
※便宜上、水棲昆虫全体を差す場合は「ざざ虫」と表記し、カワゲラ単体を差す場合は「ザザムシ」と表記する。 - 昭和30年代までは、ざざ虫の主体はカワゲラ(ザザムシ)だったが40年頃を境に水質の変化からかトビケラ(青虫)が主体となった。
カワゲラが主体だった昭和30年代前半にはアメリカに輸出したという記録や、一人で一日に20kgも捕れたという記録もあるというから驚きだ。
そんなざざ虫ですが、この冬はただ単に虫が少ないというだけでなく、少し気になることが。
今年はトビケラが壊滅的。チラカゲロウが激増。
ざざ虫捕りは、こんな四つ手網で虫を捕って金網の選別器にそのまま乗せると、小石やゴミが残って元気な虫は自ら下の方へ落ちていくという仕組み。
私がざざ虫漁を始めた3年前には、ほとんどがヒゲナガカワトビケラ(釣り人はクロカワムシって言いますね)で、流れの緩い所ではヘビトンボが混じり、カワゲラはほんの少しでカゲロウはほとんど入りませんでした。
昨シーズン(2016年12月から年明けの2017年2月まで)はカワゲラが多くなってきている感じでした。そして、今シーズン(2017年12月から年明けの2018年2月まで)は、前に書いた通り、トビケラは壊滅的。絶対数は少ないけれど、カワゲラ(写真黄色矢印)の比率が多く、カゲロウ(写真赤矢印)が激増した感じ。
カゲロウ類の種類について今までよくわかってなかったんだけど、釣り人が言うピンチョロは狭義ではフタオカゲロウを差すらしい。これがフタオカゲロウかモンカゲロウだと思っていたんだけど、よく調べたらこの背中に1本縦縞が入るのはチラカゲロウという種類らしい。
ともかく、このチラカゲロウが大部分で、少しモンカゲロウが混じっている感じ。
ここで、もう一度天竜川に棲む水棲昆虫のご紹介。
写真1枚目、今現在のざざ虫の主役、ヒゲナガカワトビケラ(クロカワムシ)。
写真2枚目、昭和30年代まで主役だったカワゲラ(オニチョロ、キンパク)。
写真1枚目、チラカゲロウ。これが今シーズン激増。
写真2枚目、ヒラタカゲロウ。天竜川では少数。
写真1枚目、ヘビトンボ(マゴタロウムシ)。これは比較的緩い流れのところにいます。
写真2枚目、ヒラタドロムシ。これが選別器やザルに吸盤のように貼り付いて厄介。
トンボのヤゴ。トンボの種類はわからないけど、これも比較的緩い流れにいます。
あとはまれに、ヒルが入ったり、チチブ、ヨシノボリ、アカザ、沢ガニ、アメリカザリガニなんかが入ることもあります。
今シーズンはトビケラは壊滅的だから今までのざざ虫と違うけど、カワゲラ主体のざざ虫(本来のざざ虫)を佃煮にしてみよう。
下茹でして最終的にゴミを選別して食べられる状態にしたもの。茹でると赤紫色になるトビケラは大きくて存在感があるのでそこそこ入っているように見えますが、白いお腹を見せているカワゲラの方が数が多いです。。こんな比率でカワゲラが入っているのは珍しいです。
そして、カゲロウは小さいのでこの写真ではわかりにくいですが、数としてはかなり入っています。
佃煮にします。作り方はこちら。
最後の仕上げに、水飴とハチミツを使います。
出来上がりました!
うまそう・・・に見える人はヤバイ(笑)
本来のザザムシ、カワゲラがたくさん入っていますね。
ざざ虫佃煮の食べ比べ。
今回佃煮にした4種の虫を食べ比べて見ましょう。
一口にざざ虫の佃煮と言っているけど、虫によってだいぶ味が違います。
ヒゲナガカワトビケラ。
上にも書きましたが、今、ざざ虫と言えばトビケラの佃煮を差します。
昔から虫を食べてきたお爺さんたちも、トビケラの方がカワゲラより美味いという人が多いですね。表面はカリッと中はモッチリしした食感。味はほんのり川の苔の味がします。
カワゲラ。
私はこちらの方が好き。味は癖がなく、アミエビの佃煮のようで香ばしさがあります。
トビケラより軽くて小さいので、たくさん捕ろうと思うと大変だけど。
ヘビトンボ。
これは見た目がインパクトあるし、食べ応えもありますな。
これが一番うまいと言う人がいるけど、それはわからないでもない。
身が厚い分、旨味は一番あるし、カリカリとした食感も虫だと思わなきゃイケている(笑)
チラカゲロウ。
かなりの数が入っていたけど、佃煮にするとさすがに小さくなって存在感がない。
でも、今回初めて佃煮にしてみたら、この虫が一番うまい!
他の三種よりもジューシーで脂が乗っている感じ。
小さいので食べ応えがないのが残念だけど、蜂の子のようなうまさがあります。
天竜川の水棲昆虫の構成が変化している?
そんなわけで、昨年からカワゲラが増えてきていて、今年はトビケラが激減してチラカゲロウが急増しました。他の虫も含めての全体量は少なくなっています。
ざざ虫漁をやっているお爺さんたちも、一応ざざ虫漁を管轄している漁協でも単に「今年はざざ虫が不漁」と捉えているけど、虫類の構成がだいぶ変化してきていると思います。
来年またトビケラが復活すれば良いけど、来年も不漁となれば天竜川の水質を含めて虫が棲息する環境に何らかの変化があって水棲昆虫の勢力分布が変わってきているということだと思います。
昔のようにカワゲラが主体に戻るのか。それとも全体の虫の量が少なくなってしまうのか。
いろんな意味で、来シーズンのざざ虫漁には注目したいと思います。
地域特有の食べ物ですね
私は好きで其方に行くと買ってますが妻は食べません
見た目で判断してます、孫は食べます
前回の放流魚は後半川虫「チラカゲロウ」で釣れました
2匹付けて流しヒットしてました。イワナ釣りは「キンパク」ですね
これもそろそろ捕りに出かけないと。