先日木曽川のざざ虫を確認しに行った私ですが、天竜川のざざ虫漁最後の日に、見慣れない魚が網に入ったのです。
天竜川上流部で初めて見る魚が網に入る
天竜川にはチチブとヌマチチブの二種類が棲息している。
この秘蔵ポイントも二日間でほぼ捕れそうな瀬はガサガサやり尽くしたので、そろそろ終わりにしようかなと思っていると、網の中に例のチチブが入りました。
この前、似たような三種の魚の比較で紹介したチチブは、
胸びれの付け根に白っぽい帯模様がありますが、淡く地味な色合い。
今回網に入ったやつは、
胸びれの付け根の黄色のラインの中に鮮やかなオレンジ色が混じります。
拡大するとこんな感じ(赤矢印)。
このオレンジ色が入るものがヌマチチブだということで判別点になっていますが、学術的な意味を除いてはこの二種は特に分けて考える必要はないとのこと。
本来はヌマチチブの方が中流域(今回捕獲した辺り)にいて、チチブの方がもっと下の下流域や汽水域にいるらしいけど、両者が混在していることもあるとか。
ともかく、天竜川上流部には二種類のチチブがいるようです。
今度こそ新種発見か!? カジカのようなカジカじゃないようなやつ
それとは別に、もう一種類見慣れない魚が網に入りました。
網に入った時はカジカだと思いました。
体の模様はカジカによく似ています。カジカに見えるでしょ、この角度だと。
だけど頭の形が全く違います。
なんか鼻面が長くて平べったく、つるんとしていてナマズっぽいというか・・・
何これ?
カジカはもっとゴツい頭をしてるし、胸びれもしっかりしています。
体側の柄や鰭はこんな感じ。
天然イワナの様にお腹は黄色を帯びていて、背びれや尾びれの先端も黄色く縁取られています。
ぱっと見カジカに見えたけど、違和感を感じたのは顔(頭)の形。
上にも書いた通り、鼻面(目から口先まで)が長くて顔も妙に縦にぺちゃっとつぶれた扁平顔。
写真2枚目の横顔を見るとはっきりわかると思います。カジカとは全く顔が違いますね。
そして、腹びれはハゼ科のヨシノボリやチチブ同様2枚が融合して吸盤状に進化したタイプ。これはカジカの仲間にはない特徴です。
これはいったい、何者なの??
図書館へ行って調べよう!
ネットで検索しても、ピンとくる写真が見つからない。
こういう時はやっぱり図書館に行って調べるしかないですね。
各市町村に図書館はありますが、この辺りでは一番蔵書の多そうな伊那市立図書館にやってきました。
謎の魚が載っていそうな図鑑4冊で調べてみることに。
それぞれの図鑑で、カジカ科の魚、ハゼ科の魚をくまなく見ていきますが、ピンとくる魚がありません。
ただ、カジカ科の魚の腹びれは吸盤上ではなく、吸盤上の腹びれをしているのはハゼ科の仲間だというのはあらためてはっきりしました。
可能性があるとしたらこれが近いかなぁ。
扁平な顔やヒレの模様なんかも似てる。
この魚はウキゴリなのか。
この写真は標本的な写真だから色合いや印象がだいぶ違うけど、オスとメスが出ていてメスに関する記述「繁殖期のメスの腹側部は黄色」・・・これはまさしく私が捕まえた魚の特徴と合致します。捕まえた魚は第二背ビレと尾ビレの外縁部も鮮やかな黄色だったけど、この標本写真では黄色くなってないですけども。
水中で生きてる状態の写真も載っていて・・・
これは似てる。体の模様はカジカみたいだし、顔はかなり扁平型。
このちょっとナマズみたいな顔も似てる。
これだと思う、謎の魚はウキゴリじゃないかな。
あらためて、ウキゴリをネット検索。
こちらのページに掲載されている一番下の岡山県で採取された個体はかなり似ています。
これは、ウキゴリで確定!
イワナやアマゴだって川によって(場合のよっては同じ川でも)色合いや模様にはだいぶ個体差があるんだし、ウキゴリだってかなり個体差があるんだと思う。
一つ気になることがあって、今回調べた図鑑はこの4冊で、
刊行年は左から、1992年改訂版→2000年初版→2014年初版→2015年初版。
3冊目まではカジカはカサゴ目カジカ科に分類されているのに、一番右の図鑑ではカジカがなぜかスズキ目ハゼ科に分類されてるんですよね。
これがちょっと謎。
ウィキペディアで見ても、カサゴ目カジカ科に分類されているし、まさかこの図鑑が単純に間違えているだけってことはないと思うけど・・・
AMAMOさんからコメントいただいて気づきましたが、上記の「カジカがスズキ目ハゼ科に分類されている」というのは私の勘違いでした。正しくは「カサゴ目カジカ科だったものが、スズキ目カジカ科に分類されている」でした。
申し訳ありません。山と渓谷社さん、ごめんなさい。
カジカ科はカサゴ目だったのに、スズキ目に変更されたということでしょうかね。
カジカはカサゴ目の方がしっくりきます、個人的には。
まぁ、分類については時代とともに変わることも多々あるし、分類学者に任せておくとして、今回の謎の魚はウキゴリだとわかったことで、天竜川に棲むハゼみたいな魚三兄弟は、これで四兄弟になりました(笑)
ウキゴリは日本全国に広く分布していて特に珍しいものではないので、写真を見てすぐにわかった人もいると思いますが、河川の中流部から下流部が生息域のようで、天竜川上流部では私は一度も見たことがありませんでした。例のアカザに続き、単に私が知らなかっただけという結果に(苦笑)
新種かと思ったのに、残念 (T-T)
さて、明日2月16日は、天竜川水系の渓流解禁日なのに雨予報、どうしよーかなー。
コメント
こんばんは。
私はみんなカジカだと思ってました
(^_^;)
ごくたまに釣れたりもしますが、あまり興味がなかったので。
明日は残念な天気ですね。
このところ暖かくて釣果も期待できそうだったけど。
wakudokirunさん、おはようございます。
ぱっと見、みんなカジカに見えると思いますよ。私も中学生の頃は全部カジカだと思ってましたもん(笑)
カジカはだいぶ前に渓流餌釣りの外道として釣ったことが何度かありますが、今も源流部には同じように棲息しているのか、気になるところです。
朝から一日中雨でしたが、バカなので釣りに行ってしまいました (^_^;)
例年より水温高めで活性は高かったですが、やはり雨の日の釣りは嫌です。
ウキゴリは少々顔が扁平なので、カジカほどの『格好良さ』には欠けるかも・・・(笑)
小さい時は、もう少し可愛い顔をしているんですけどね。^^
相変わらず、研究熱心なところは感心しますよ・・・ホント。
kuniさん、おはようございます。
ウキゴリの顔は少々どころかペッチャンコと言っていいくらい扁平なんですよね(笑)
全然かっこ良くないですが、愛嬌はありますね。
もっと小さい時は顔つきがちょっと違うんですか。
そのうちに『ハゼみたいな魚研究家』という肩書きが付くと思います(笑)
ハゼ(カジカ)みたいな魚の中では、アユカケの実物を見てみたいと思っています 。
おはようございます。
天竜川は沢山の種類の魚がいますね、源流が諏訪湖ということもあるかもしれませんね、カジカはすっかり見られなくなっしたが、昔のように科学洗剤を使わない適度の生活排水も必要なのかもしれませんね。
ハックル70さん、おはようございます。
天竜川は木曽川より棲息している魚の種類は多いです (^_^)
おっしゃる通りで諏訪湖から流れ出しているというのが大きいと思います。川の上流部なのに、湖沼に棲息しているような魚もいますから。
諏訪湖の水質も天竜川の水質も昔とは変わってきているようですが、魚たちにとって良い方向へ向かっているのかどうかはわからないですね。
残念。 川には、気がつかないだけで、色々な魚が住んでますね。 毎回、リコさんのブログで勉強になります(^-^)
Kさん、おはようございます。
もしや新種では!?と色めき立ちましたが、天竜川上流部では珍しいだけで、全国的に中流域下流域では平凡なヤツでした(笑)
ずっと前ですが、天竜川でアリゲーターガーが捕獲されたことがあるくらいですから謎の魚がまだまだいるかもしれません。
天竜川にどんな魚が棲んでいるのか、私も日々勉強中です (^_^)
こんにちは。
写真を見た瞬間は黄色斑模様で、一瞬雷魚かと思いました。
体型も背びれ形も似ても似つかないので、何だろう?
ウキゴリと聞いてもピンとこず。
ゴリって、金沢に行くと出てくるゴリの佃煮のゴリ?
でも、佃煮のゴリは小さかったような・・・。
素直にウキゴリと理解しておきます。
マンボウさん、おはようございます。
私は網に入った瞬間には体の模様はカジカだと思いましたが、明るい色合いなので確かに雷魚にも似てますね。顔もナマズっぽいし(笑)
金沢の方で佃煮やから揚げなど『ゴリ料理』として提供されているものは、カジカらしいです。
全国的にカジカやハゼの仲間を『ゴリ』や『ドンコ』と呼んでいる地域が多いですが、それがカジカのことだったり、チチブのことだったり、ウキゴリのことだったりややこしいです。
いずれも同じように食べられるので問題はないですが、やはり一番美味いのはカジカだと思います (^_^)
はじめまして
ウキゴリは諏訪湖の流入河川でも見たことありますねw
ところで昨年発行された写真の一番右の図鑑の増補改訂版を持っているのですが、カジカはスズキ目カジカ科に分類されています。本当にミスだったらとんでもないミスですねww
春にになったら図鑑とにらめっこするのが楽しみです。
AMAMOさん、初めまして。
ウキゴリは諏訪湖流入河川にもいるんですね。そうなると、天竜川のウキゴリも諏訪湖から流れて来たのかもしれないですね。
図鑑に出ていたカジカの件、気になったのでもう一度図書館に行って確認してきました。
すみません! 私の勘違いでした (^_^;)
正しくは、「カサゴ目カジカ科だったカジカが、スズキ目カジカ科に分類されている」でした。
コメントいただいたので、気づきました。ありがとうございます!
そして山と渓谷社さん、ごめんなさい。本文も訂正しました。
近年、カジカ科全体がカサゴ目からスズキ目に変更されたんでしょうかね。
淡水魚は身近にそんなにたくさんの種類がいるとは思っていませんでしたが、調べてみるとかなり種類が多いんですよね。
特に諏訪湖とその流入河川にはまだまだ面白い魚がいそうですね (^_^)
インターネットの情報だけなのでなんとも言えませんがカサゴ亜目をスズキ目の下に置く分類方法もあるのかもしれないですね。
イワナ然り、分類学はややこしくて奥が深そうですねw
AMAMOさん、こんばんは。
ありがとうございます。
おっしゃる通りで、カサゴ目ではなく亜目扱いにする分類法もあるのかもしれないですね。
イワナの分類も諸説あるみたいで、はっきりしないんですよね (^_^;)
分類は時代とともに変わっていくことがかなりありますよね。
サケ科の魚は、昔はイトウ属、イワナ属、ニジマス属、サケ属の4つに分類されてましたが、ニジマスはサケ属に移動して替わりにサルモ属が加わった4つになったと思ったら、今はもっと多くの属分類になっているみたいで、どれが正しいのかよくわかりません(笑)