このところ、テンカラ釣りをする機会が多いです。
テンカラの魅力に取り憑かれたということもありますが、ドライフライで釣りにくいポイントや状況でもテンカラならなんとかなる場合があるから、ということもあります。
テンカラ釣りの魅力と道具選び|初心者にお勧めの竿とライン
テンカラ釣りの魅力は、ピンポイントに毛鉤を打ち込んで魚に食いつかせる楽しさはもちろんなんですが、シンプルな道具立てで身軽な釣りができる点も。
振り出し竿と糸と毛鉤、それさえあれば魚が釣れます。
同じ毛鉤釣りでも、フライフィッシングの場合は継ぎ竿とリール、それに毛鉤の種類は多くならざらるを得ないし、リーダーやティペットも数種類、浮力材関連などなど、とにかく荷物が多くなってしまいます。
シンプルな道具立てということは、つまりお金もかからない釣りだということです。その点は本当にもうルアーやフライとは比較になりません。ルアーやフライをやっている人はこれまでに自分が釣具にかけた合計金額は怖くて絶対計算しませんもん(笑)
なので、これから渓流釣りを始めようとする方は、テンカラならさほどお金をかけずに釣りが楽しめますよ。
ただ、シンプルな道具なのでいろいろ悩む必要もないかというと、逆にシンプルなだけに道具のバランスが重要でそれを間違えると毛鉤をうまく打ち込むことができず、「テンカラってやっぱり難しいね」と挫折してしまうことになりかねません。
餌釣りから移行しようと挑戦してみたけど、結局諦めてしまったという方も結構いるし。
私はフライもテンカラも誰かに教わるということはなく、全くゼロの状態から悪戦苦闘してなんとか釣れるようになったので、これからテンカラを始めようという方の気持ちはよくわかります。「テンカラって毛鉤がうまく飛ばないじゃん」とか「やっぱりテンカラよりフライの方が釣れるよね」とか。
ここから先はベテランの方ではなく、これからテンカラを始めようとしている方、もしくは初心者の方に向けて書きます。
初心者にお勧めのテンカラ竿
竿はもちろん重要なんですが、名のあるメーカーの10,000円〜20,000円くらいのものを買えばまず問題ないです。
各メーカーともその年の生産分は春先に在庫がなくなってしまうことが多く今の時期(6月)になると品切れのものが多いので、買うなら2月、3月がお勧めですね。
今の時期でも比較的入手しやすいお勧めの竿は以下のものです。
シマノ 天平テンカラ、ダイワ テンカラX、宇崎日新 プロフェッショナル軽極テンカラ6:4
いずれも3.3mがお勧めです。
そして、いろんな種類があってどれを使ったら良いのか悩んでしまうのが、ライン。これが一番厄介かもしれません。
今は、太さが均一なフロロ素材のレベルラインが主流でテーパーラインは少数派だと良く聞きますが、実際のところどうなんでしょうね。私はテーパーラインをよく使っています。
5種類のラインを2本の竿で振り比べてみよう!
テンカララインは大きく分けて元の方が太く先の方が細くなっているテーパーラインと、元から先まで同じ太さのレベルラインに分かれます。そして、それぞれ複数の細い糸を撚ったラインと撚りのかかっていない単線ラインに分かれます。
私の手元にある5種類のラインを見てみましょう。
- 撚り糸テーパーライン
(確かriver peakで購入したものですが現在廃盤…似たものとしてはこちら) - river peakテンカラ用フライラインフローティング
(楽天で見る・アマゾンで見る・ヤフーで見る) - サンラインぶっとびテンカラレベルライン 3.5号
(楽天で見る・アマゾンで見る・ヤフーで見る) - Fujino ソフトテンカラ
(楽天で見る・アマゾンで見る・ヤフーで見る) - Fujino テンカラストレートラインAQ
(楽天で見る・アマゾンで見る・ヤフーで見る)
(1)は、極細い糸が撚られていて元から先にかけてかなりきついテーパーが付いています。
ゴワゴワしていそうに見えますが、実際はかなりしなやかで巻き癖は付きません。
(2)はフライラインと同じ構造のフローティングライン。#0ラインくらいの太さ。
テーパーは付いておらず、元から先まで同じ太さ。
(3)はフロロカーボンのレベルライン。元から先まで同じ太さ。
言ってみればただの3.5号のフロロライン。5種の中で一番細い。そして、フロロラインを自分の好みの長さに切って使えるのでコストパフォマーンスはNo.1。
(4)はナイロン単線のテーパーライン。元から先に向かうに従って細くなっています。
※この二つのラインは巻き癖が付きやすいので、仕掛け巻きから伸ばしてから少し引っ張るようにして巻き癖をとってから使う必要があります。
(5)はポリアリレートという素材の細い糸を組み糸にしたもの。
しなやかで軽く巻き癖が付かない。元から先まで同じ太さ。
これら個別には振ってみたことはあるんだけど、仕掛けの長さが微妙に違ったり竿が違ったりで、同じ条件で比較したことがなかったんですよね。
3.3mと3.4mのテンカラ竿で私が普段使う長さのライン(3.3m)に揃えました。
そしてその先にはフロロ1号のリーダー(ハリス)を1m付けて全長4.3mの仕掛けにして毛鉤を結んで振ってみます。
もちろん広場でやってみても良いんですが、雰囲気出ないので近くの沢まで出かけます。
テスト後、少し釣ってみて運良く塩焼きサイズが釣れれば、先日野菜をもらったお返しにお届けしようと思いますが、そういう時に限って釣れないんだよね(笑)
やってきました。梅雨なのに雨があまり降らず、超渇水状態です。
竿はこのところよく使っているダイワNEOテンカラミノムシ33と久しぶりに振るシマノ 渓流テンカラ ZLです(詳しくはこちら)。
仕掛け5種類を並べて、竿を取り替えながらそれぞれのラインを振ってみます。
ミノムシ33×撚り糸テーパーライン
しっかりとしたテーパーが付いているのでコントロール性能は抜群です。狙った場所にビシッと毛鉤を落とせます。しかし、問題はラインの重さ。
毛鉤を落とした直後にラインの重さで毛鉤が手前に引かれてしまいます。叩き釣りで毛鉤を落とした瞬間に魚が出れば良いですが、そのまま自然に流すのは難しいです。
渓流テンカラ ZL×撚り糸テーパーライン
竿が負けてしまうかと思いましたが、そこまでではなく、まぁ問題なく振れます。一日中振ると疲れるかもしれませんが。
ミノムシ33×テンカラ用フライライン
これは、フライフィッシングをやっている人にとってはとても扱いやすいラインです。
細い(#0くらいかな)フローティングラインそのものなので、巻き癖も付きにくいしピンポイントキャストもできます。上記撚り糸テーパーラインほどではないけれど、その重さで毛鉤が引かれてしまうのが欠点。
リーダー(ハリス)を長くしてドライフライを使い、フライフィッシングのようにラインを水面に置いてしまった方が釣れるような気もします。
渓流テンカラ ZL×テンカラ用フライライン
全く違和感なく操作できます。普通に振るとミノムシ33よりもワイドなループになります。
ミノムシ33×フロロレベルライン3.5号
この竿との組み合わせで問題なのはフロロのレベルライン。メーカーではテーパーライン&レベルライン対応と謳ってはいますが、この竿は硬めなので毛鉤を狙ったポイントに打ち込むのがかなり難しいです。
渓流テンカラ ZL×フロロレベルライン3.5号
このラインとの組み合わせではミノムシ33とは全く違います。レベルラインで容易にループが作れるので、コントロールが効きます。
ミノムシ33×ソフトテンカラ
しなやかな単線のテーパーラインでピンポイントコントロールが効きます。
この竿との相性がとても良いと思います。
渓流テンカラ ZL×フロロレベルライン3.5号
この竿との組み合わせでも問題なくコントロールできます。
ミノムシ33×ストレートラインAQ
しなやかで巻き癖の付かないラインなので、とても扱いやすいです。軽いので毛鉤着水後も毛鉤を不自然に引くようなこともありません。この竿でも問題はないですが、渓流テンカラ ZLの方がよりスムーズな振り込みができます。
ただ、組み糸なので空気抵抗があり風に煽られやすいのが欠点。
渓流テンカラ ZL×ストレートラインAQ
こちらの組み合わせ、どちらもテンカラ大王こと石垣尚男さんがプロデュースしているので、ミノムシ33に比べてスムーズな振り込みができます。相性は抜群です。
5種類のラインを比較テストしてみた結果
撚り糸テーパーラインは、ことラインコントロールにおいては素晴らしい性能を持っていますが、魚を釣ろうとすると問題ありだし、現在廃盤なので除外。
river peakテンカラ用フライラインフローティングは、テンカラ竿を使ったフライフィッシングをやるのであれば、面白いラインだと思います。
リーダー(ハリス)を長く取って、ラインを水面に置く釣り方ができるのが強み。枝が張り出した下をサイドキャストで狙うこともできるでしょう。
サンラインぶっとびテンカラレベルラインは、胴調子寄り(6:4や5:5)の竿に向いたラインです。先調子(8:2や7:3)竿ではとても振りにくいです。
初心者の方は竿の調子が明記されているものを買った方が良いでしょう。
Fujino ソフトテンカラは、先調子の硬めの竿に向いたラインですが、胴調子寄りの竿でも振れる許容幅があります。
Fujino テンカラストレートラインAQは、胴調子寄りの竿が向いていますが、先調子の竿でもコントロールできる許容幅があります。
このラインは組み糸で、風の抵抗を受けやすいので風の強い日には向きません。
初心者にお勧めのテンカララインはFujino ソフトテンカラ
上記を比較テストを踏まえると、
ダイワNEOテンカラミノムシ33に最適なラインは、Fujino ソフトテンカラ。
シマノ 渓流テンカラ ZLに最適なライン、サンラインぶっとびテンカラレベルライン 3.5号。
他の竿を含めて言い換えると、
先調子または硬めの竿にお勧めのラインはFujino ソフトテンカラ。
胴調子または柔らかめの竿にお勧めのラインはサンラインぶっとびテンカラレベルライン。
となりますが、初心者に一番お勧めのラインはFujino ソフトテンカラです。
レベルラインの方が毛鉤を長い距離自然に流すことができますが、それ以前に狙ったポイントに毛鉤を落とすことができなければ意味がありません。
単線のテーパーラインはレベルラインに比べると初心者でも圧倒的にコントロールしやすいです。そして、ピンポイントで毛鉤が打つことができれば、そんなに長い距離を流す必要はなく、1、2、3と数えたら空アワセをして、また打ち返すという釣り方で釣果を上げることができるはずです。
まずは、比較的小規模な渓流でピンポイントに打ち込みを繰り返す「たたき釣り」をやってみてください。必ず釣れるようになります。
小規模渓流と言っても、藪沢はダメですよ。上が開けていて仕掛けが振りやすいことが条件です。難しいポイントはパスして、竿が振れそうなポイントだけを狙って遡れば良いです。5月以降は、大場所はスルーして浅い小場所を狙ってください。そんなところに魚はいます。
そして、ある程度渓流魚を釣る感覚を掴んでから、もっと長い距離自然に毛鉤を流す釣り方をするのであれば、より自然に毛鉤を流せるレベルラインを使ってみれば良いと思うんですよね。
渓流テンカラ ZL×フロロレベルライン3.5号
さて、比較テストが終わったところで、渓流テンカラ ZL×フロロレベルライン3.5号の組み合わせで少しだけ釣ってみます。
渓流テンカラ ZLはスムーズな振り込みができてとてもお気に入りではあるんですが、いかんせん仕舞寸法が長くて、バックパックを背負って林道を上っていくような川には向かないんですよね。だから、使うのも久々。
渓流テンカラ ZLでレベルラインの釣りを楽しもう。
ニセ・スギッパ巻きを結んで釣り開始。
レベルラインなので、打ち込んでからいつもより少し長めに流してみます。
白泡が切れた流心の脇、岸壁側から早速出ました。
短いフライロッドに比べて、3.3mのテンカラ竿だと張り出した枝などが邪魔になって振れるポイントが限られます。
逆光でラインすら見にくい状況ですが、落ち込みの肩から出ました。
久々のド派手アマゴの系統。
今シーズン、一時姿を消したかなと思っていたんだけど、また放流したのかな。
塩焼きに良さそうなサイズだから、キープさせてもらおう。
パンパンに膨らんだ胃袋の中身は?
捌いてみると、胃袋がパンパンに膨らんでいます。一体何を食べているの?
これはすごい!
最初地蜂(クロスズメバチ)かと思ったけど、よく見るとこれムネアカオオアリの羽蟻、つまりは女王蜂だよね。アリって新しい巣を作るために飛び立つ結婚飛行という生態があるらしく、種によってその時期も違うのだとか。
この場所では今がその最盛期なのかな。それにても、羽蟻がこんなにたくさん川に流れてくるのはなぜ?
以前もイワナの胃袋の中に蟻(羽蟻ではない)がぎっしり詰まっていたことがあったけど、そんなに蟻がまとまって流れてくる状況って??
ともかく、こんな蟻をたくさん直近で(消化されていない個体が多いから)食べてるなら、黒い毛鉤が流れてきたら疑いなく食いつくよね。今日はテンカラ釣りにとっては相当な好条件だと言えるでしょう。
魚をキープするためにクリールも持ってきました。フィッシングリュックの下部コンパートメントにすっぽり収まるのは、保冷力は抜群。
魚をキープするつもりで準備をしてくると大体釣れないことが多いですが、今日は3尾だけキープできれば十分なので、なんとかなるかな。
この沢のこの区間はほとんどがアマゴですが、時々イワナも釣れます。
テンカラ釣りの奥義とは?
浅瀬の流心脇。
浅場に魚が出ていますが、こういう平坦な場所はこちらの気配を悟られないように最新の注意を払わないと魚に逃げ込まれ、もう毛鉤を食ってはくれなくなります。
テンカラの場合、フライやルアーに比べてどうしても魚との距離が近くなるので、木に化けたり石に化けたりという技術が必要になります。
それこそが、テンカラ釣りの奥義なんだと思います。
これもド派手アマゴですね。やはり、少し前にまた成魚放流したんでしょう。
できることならもっと野生味溢れる魚にしたかったけど仕方ない、3尾キープしてお届けすることにします。
先方は釣りをする方はではないので、野生魚なのか放流魚なのかは全く気にする様子はなく喜んでくれたのでありがたいです。
コメント
テンカラ竿とラインの関係が非常に解りやすいです、参考になります
私はダイワNEOテンカラミノムシ3.3とフジノテンカラストレートラインAQと同パワフルを
購入し、これから様子を見て使う予定です
まだキャストに自信がないのと、そこにエネルギーを使いたくないので
まずは魚が毛ばりにどう反応し咥えるのか確認したく提灯テンカラから取り組む事にしました
ダイワ雪渓6Mにフジノストレートラインパワフル1.5m+フロロ0.8号0.5mにしています
ここに書かれているように初心者はフジノソフトテンカララインの方が使いやすいでしょうか?
ハリスは餌釣りに比べ太いようですが、ハリスと太さは神経質になる必要はないのでしょうか?
よろしくお願いします
安曇野遊山人さん、こんばんは。
安曇野遊山人さんは、ブログをお持ちだったんですね。ブログリンクのコーナーに追加せてていただきました。
ライン1.5mの提灯仕掛けならどのラインでも問題はないと思います。強いて言えばラインが目立たないカラーの物の方が良いと思います。ストレートラインならパワフルタイプじゃないもので十分だと思われます。
エサ釣りの竿を流用してちょっと試してみる、という程度なら良いですが、ダイワ雪渓6Mは167gもあるので、毛鉤の打ち返しを繰り返すテンカラ釣りでは疲れてしまうかもしれません。
それと、提灯テンカラは仕掛けが短いので魚の近くまで竿を入れなければならず、魚にこちらの気配を察知される可能性が高くなります。場合によっては普通のテンカラ釣りより難しいかもしれないですよ。
ともかく、一度テンカラ釣りをやってみるといろいろわかることもあると思いますので、どんな方法であれやってみてください。
ハリスについては、毛鉤を水面に浮かべる釣りだと太さは釣果に影響しますが、毛鉤を水面下に入れる釣り方の場合は、光の屈折率が水と同じフロロのハリスであれば水中に入って時点で見えなくなるので0.8号、または1号で全然問題ないです。
0.8号より細いとアワセ切れや取り込みの際のハリス切れが多発すると思います。
参考になります。私は、4号のレベルラインを使ってますが、他のラインを使った事がないです 一度、細いフライラインを付けて振ってみましたが、私には会わず止めたしまいました。
Kさん、こんばんは。
返信だいぶ遅くなってしまい、申し訳ありません。
フライラインでもキャスティング自体は大丈夫だとは思いますが、長い距離を流そうと思うと重いラインに引っ張られて不自然な動きになるのが問題ありです。
レベルラインが振れる竿であれば、4号または3.5号のフロロラインが扱いやすいですね。
>ルアーやフライをやっている人はこれまでに自分が釣具にかけた合計金額は怖くて絶対計算しませんもん(笑)
そこはもう決して意識してはいけない、神の領域ですからね。(笑)
ライン比較面白いです。^^
ボクは3番のラインしか使ったことがないですが、竿との相性が良いからか今のところ不便を感じたことはありません。
たまたま2本持っている竿両方とも、胴調子気味だったからでしょうね。
釣果の写真まで見せられちゃったら、早く行かないとダメですねぇ。
kuniさん、こんばんは。
『神の領域』だったんですね。それは迂闊に手を出せませんね(笑)
フロロのレベルラインを問題なく投げられる竿があれば、魚へのプレッシャーも低いしコスパも良いので一番だと思います。
テンカラ竿見つかって良かったです。これで沢へ釣りに行けますね。
おはようございます
テンカラ竿とラインの組合せで随分と変化するんだなと感心しました。
アマゴの胃から出た蟻にはビックリです。
川魚の食を満たせられる程に大量の蟻が、川面に落ちるんですね、驚きです。
マンボウさん、こんばんは。
普通の釣りは遠心力を使って仕掛け(餌)を投げますが、フライやテンカラはラインに直進性の力を加えて遠くに飛ばすので、竿によって力の加えやすい竿とそうでない竿があります。
アマゴの胃袋の中身はほとんど消化していなかったので、直近で食べた物だと思います。あれだけたくさんの蟻を一度に食べたらさぞかし満腹でしょうね。